子猫が怖い。気迫が怖い。
私は子猫が怖い。
子猫は生きようとする「生への気迫」で満ちている。
私はその「生への気迫」が幼い頃から貧弱で、子猫の気迫を見ると圧倒されて恐ろしくなる。
私は子猫が怖い。
子猫は体温を保つ機能が弱く、凍死しやすい。
自分で十分な体温を生み出せないために、親猫の懐の中に包まりその熱を分けて貰い命を繋ぐ。
子猫がにゃあにゃあと良く鳴き、人懐こく擦り寄って来るのは凍死を避ける本能である
。
あの小さな体からは想像できない大きな声は、生きていたい、死にたくないという決死の叫びに他ならない。
生きる意志が貧弱な私にとって、その叫びは余りにも眩しく余りにも尊い。
触れ得ざる威光のように感じる。
より正確に言うならば、私の恐怖は「畏れ」に近い。
私は子猫が怖い。
彼らを見ていると申し訳なくなり、後ろめたくなり、恐ろしくなる。
私は子猫が怖い。